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ドラマ10「テミスの不確かな法廷」

テレビ番組 ドラマ
2026

OVERVIEW 概要

2026年1月からNHK総合「ドラマ10」枠にて全8話にわたって放送された法廷ヒューマンドラマ。発達障害を抱える裁判官をはじめ、裁判所職員、検事、弁護士——それぞれが真実を求めてぶつかり合う緊迫した法廷の攻防と、時にかみ合わない会話をコミカルに描いた本作品は、「普通とは何か」「正義とは何か」を問いかけます。

ISSUE 課題

本作品に取り組むにあたって最大の課題は、ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)による抑えられ衝動と戦いながら裁判官の役務を全うしようとする主人公を、いかに“リアリティ”を持って見せられるかでした。特性を強調すれば誇張になる一方で、抑えすぎれば葛藤が伝わらない。
そこに少しでも作為が感じられれば、主人公が困難を乗り越えようとする感動が薄れてしまう。だからこそ、リアリティを求めなければいけないのですが、「普通を装いながらも、カミングアウトせずに裁判に臨もうとする」繊細なバランスをリアリティを持って描く方法を見つけ出すことが最大の難関となりました。

APPROACH 取組

開発の序盤では「ASD・ADHDを正しく描くこと」に捉われていました。しかし、専門医や当事者への取材を重ねると、特性の表れ方は千差万別で、取り巻く環境や周囲の理解の度合いによって、困難のあるなしも異なることが分かりました。そこで“共通解”を探すのではなく、「安堂清春という一人の人間の存在を感じられるように、細かく設定を決めて、リアリティを追求する」ことに集中しました。取材を通じて法廷で集中を保つ方法(六法全書を押し当てるような圧迫刺激が集中を保つ一つの行為)や、衝動を抑えるための小さな工夫をリサーチし、「安堂清春」に反映させていきました。さらに現場では、出演者・監督・スタッフが「この行動は本当に彼のものか」を常に問い続けながら、人物像を掘り下げました。

CHALLENGE 制作の工夫

撮影前には安堂の設定資料を作成し、着る衣服の素材に至るまで検討し、演出・美術・衣装・ヘアメイクが一体となって人物像を構築しました。こうした執念に近い積み重ねが、“説明ではなく存在で伝わるリアリティ”を生み出したと思います。また撮影が始まってからも細部に至るまでこだわり続けました。象徴的なのが、第1話で安堂がケチャップライスを食べるシーンです。
撮影当初は金属のスプーンが使われていましたが、「容器に当たる音を彼は不快に感じるのではないか」という(安堂を演じる)松山ケンイチさんからの提案で、木製スプーンに変更し、シーン自体を撮り直しました。

RESULT 成果

安堂の葛藤や失敗を率直に描くことが、当事者の方々にどう受け入れられるのか、正直に言えば不安もありました。しかし放送後、当事者やそのご家族から「ありがとう」「勇気をもらえた」との声をいただき、また多くの視聴者から「特性を持つ方の生きづらさを知ることができた」と言っていただきました。
結果、視聴率は2020年台のドラマ10で最高を記録し、配信でも長期1位を維持するなど、社会性とエンターテインメントを両立した作品として高い評価を得ることができました。

STAFF スタッフ

制作統括
橋立聖史(ランプ)
神林伸太郎(NHKエンタープライズ)
渡辺悟(NHK)
原作
直島翔
脚本
浜田秀哉
音楽
jizue
演出
吉川久岳(ランプ)、山下和徳、相良健一、富澤昭文
出演
松山ケンイチ  鳴海唯 恒松祐里 山崎樹範
山田真歩 葉山奨之 小木茂光 山本未來 齋藤飛鳥
市川実日子/和久井映見 遠藤憲一