5月29日、DVD「時代と歩んだ国鉄列車」（5巻シリーズ）が発売されます。このDVDは、NHKアーカイブスの貴重な映像を発掘・編集し、国鉄時代のさまざまな列車や、鉄道とともに歩んできた時代の懐かしい風景を描き出した作品です。
「NHKに残されている昔の番組やニュース映像から、国鉄時代の映像を集めたら貴重なDVDができるのではないか…」そんなちょっとしたアイデアからこの企画は始まりました。
日本国有鉄道（国鉄）が1949年に発足し、国鉄分割民営化によって1987年にJR各社に移行するまで約38年間。NHKアーカイブスに収められている映像も膨大で、いざ取りかかって見るとそう簡単な話ではありませんでした。鉄道や列車に関わる映像がどこに入っているのか、探しだすだけでも大変な作業です。それでもさまざまなキーワードで検索をしていくと、これまで番組やDVDにも使われていないような“お宝映像”が発掘されてきました。
探し出した映像には、映っている鉄道や車両の詳しい情報がありません。そこで専門家にお願いして、車両やその時代の出来事・時代背景をひとつひとつ調べ上げました。このようにして集まった映像からDVD5巻分の構成を作り、完成したのがオリジナルDVD「NHK DVD 時代と歩んだ国鉄列車」です。
今回のDVDに収録されているのは、戦後直後の鉄道の姿に始まり、復員列車やディーゼルカー、機関車から電化への流れ、「つばめ」「はと」の花形客車特急や修学旅行用電車「ひので」「きぼう」、そして東海道新幹線の起工から開業まで。実に5時間以上に及ぶ大作となりました。各巻には貴重な列車が写った「特製ポストカード」を、さらにBOXにはDVDをより一層楽しんでいただくためのブックレットも付けました。
“進駐軍専用列車”（昭和20年 長崎）
中学の修学旅行専用車「きぼう」（昭和34年）
昭和35年の高崎線上野行き通勤列車。高度経済成長と都市部の過密化で、東京近郊の混雑は「通勤地獄」と呼ばれるほどに
新幹線試験車両1000系。手前は営業運転には登場しないカラーリングの“幻の車両”
目指したのは、「“鉄道版”ALWAYS 三丁目の夕日」。
懐かしい日常の風景とともに、時代を彩るさまざまな列車が収録されています。
鉄道ファンにはもちろん、そうでない方にも楽しんでいただけるおススメDVDです。
NHK DVD「時代と歩んだ国鉄列車」 DVD-BOX
2015年5月29日（金）発売予定
○各巻の見どころ
1 終戦と鉄道の復興
長く続いた戦争が終わり、日本の鉄道は復興の道を歩み始めます。多くの車両が失われ、要員、燃料も不足し、その歩みは遅々としたものでしたが、かつての姿を取り戻そうとする鉄道の懸命な姿が、人々の心の拠り所となっていきました。当時の主力となっていた、戦時中の設計による簡易構造の車両や、混乱が続く中で運転された列車の傷みきった姿を収めたニュース映像が、雄弁に時代を物語っています。
2 進展する近代化
昭和30年代に入ると、国鉄は本格的な近代化の時代を迎えます。東海道本線の全線電化完成を機に、国鉄初の電車による特急「こだま」が誕生。従来から運転されていた特急「つばめ」「はと」も、塗装を明るい緑に改め、すぐに“青大将”のニックネームが贈られました。東京～博多間では後のブルートレイン「あさかぜ」が運転を開始。『動くホテル』と呼ばれ、庶民の憧れの的となりました。
3 無煙化計画と電車時代の到来
昭和30年代は、地方線区の近代化が進められた時代でもありました。続々と登場したディーゼルカーが蒸気機関車を淘汰し、東北や九州などでは新方式である交流による電化が進められていきます。上野～青森間には初のディーゼル特急「はつかり」が誕生。それは東海道・山陽以外を走る初めての特急でした。華やかなディーゼル特急の姿は、やがて訪れる特急の時代を予感させる映像です。
4 特急網の全国拡大と貨物輸送の増強
時代が昭和30年代後半を迎えると、地方線区の近代化が積極的に進められるようになります。それまで特急とは無縁であった地方にも、ディーゼル特急が進出。真新しいキハ82系や信越本線のアプト式鉄道の現役時の映像、開通した当時の北陸トンネルも登場します。
5 東海道新幹線開業
国家的プロジェクトとなった東海道新幹線の建設。この巻には、東海道新幹線の計画立案・検討から開通までの足取りが克明に記録されています。鴨宮モデル線区を走る東海道新幹線の試験車1000形の姿も登場します。そして昭和39（1964）年10月1日、東海道新幹線開業。「ひかり1号」発車の模様を貴重なドキュメント映像でたどります。