第十回は、「能楽」をはじめて取り上げます。様式と伝統を重んじる古典芸能の中にあって特に厳格な能・狂言の世界で、卓越した技術と芸の風格を兼ね備えた名手たちが、その至芸を披露します。題して「能狂言の名人 幽玄の花」。
出演は、5人の人間国宝をはじめ芸術院会員や、笛・小鼓・太鼓の家元の揃い踏み。能の家に生まれ、子供の頃から一子相伝というとり分け厳しい修行を重ねてようやくたどり着く境地は、まさに能楽600年の歴史を背負ったもの。磨き上げられた演技力と鍛え抜かれた鋭い感性から、わずかな動きにも凝縮した密度の濃さと内にみなぎる気迫がこもります。能の美は、日本の美の結晶です。
これほどの名人が同じ舞台に登場することは、これまでなく、これからも不可能と思われます。「芸の真髄」にふさわしい名人と呼ばれるレジェンドたちの競演です。一期一会の貴重な舞台を是非ご覧ください。
【演 目】
[1]舞囃子「頼政」
シテ 友枝昭世(人間国宝)
人間国宝、芸術院会員の友枝昭世が「平家物語」で知られる「頼政」の勇壮な戦の有様から老人の諦観までを演じる。武士の式能の流れを組む喜多流ならではの演目。
[2]一調一声「三井寺」
謡 野村四郎
小鼓 大倉源次郎(小鼓大倉流家元)
観世流の謡の名手で芸術選奨文部大臣賞、芸術院賞、芸大教授の野村四郎が「三井寺」の聞かせ処、子供を人買いにさらわれた母が観音様のお告げで三井寺へ向かう道行の場面。大倉源次郎が「五色流し」という華麗な超絶技巧を披露する。
[3]ワキ語り「道成寺」
語り 福王茂十郎(ワキ方福王流家元)
室町時代から続くワキ方福王流で、最も人間国宝に近いといわれる茂十郎が、道成寺の住職の鐘の顛末を語るワキの聞かせ処。
[4]狂言「清水」
シテ・太郎冠者 野村 萬(人間国宝)
人間国宝、文化功労者、芸術院会員、狂言の名手の野村萬が格調高く、やわらかに喜怒哀楽を描く。
[5]一管「鷺乱」
笛 一噌仙幸(人間国宝)
人間国宝、芸術院賞の一噌仙幸が一噌流の秘曲「鷺乱」を披露する。
[6]半能「絵馬」
シテ 梅若玄祥(人間国宝)
ツレ 観世銕之丞 ツレ 観世喜正
ワキ 福王茂十郎 笛 藤田六郎兵衛
小鼓 大倉源次郎 大鼓 亀井忠雄(人間国宝)
名手の揃い踏み。56世梅若六郎改め梅若玄祥は当代を代表する人気能役者。観世銕之丞は観世宗家の分家・銕之丞家の当主、観世喜正は観世喜之家の次期当主、藤田六郎兵衛は尾張・藤田流の家元、亀井忠雄は人間国宝、と名人が競演する。
◆「芸の真髄シリーズ 第十回 能狂言の名人 幽玄の花」
【開催日時】8月24日(水) 午後5:00開場 午後5:30開演
【場所】国立劇場[大劇場] 東京都千代田区隼町4-1
【入場料】S席 8,000円 A席 6,000円 B席 4,000円 C席 2,500円
【お問い合わせ】NHKエンタープライズ内 芸の真髄制作委員会
TEL. 03-5478-8533(土日祝を除く11時〜18時)