カンヌレポート ~MIPJuniorを視察して~

皆さんカンヌ映画祭で世界の映画スターがレッドカーペットを歩いている場面を見たことありませんか?
その同じ場所で開かれた世界最大規模の国際テレビ番組見本市「MIPCOM」(10/16~10/19)と、併設された子ども番組の国際見本市「MIPJunior」(10/14~10/15)に行って来ました。ご存知の方も多いかもしれませんが、「MIP」とは毎年春と秋にフランス・カンヌで開催される番組見本市で、世界中から番組のバイヤーが集まって各国のテレビ用のコンテンツを売買する一大イベントなんです。

1そこで感じたことを簡単ですが書いてみたいとおもいますので、しばしお付き合いください。ちなみに私は20年近くNHKで番組制作をしてきましたが、こうした国際的なコンテンツ見本市に行ったのは今回が初めてです。これまでは、主にNHKの青少年向けや教育番組を制作する部署に所属し、Eテレで放送中の「天才てれびくんYOU」(番組ホームページ)という番組のプロデューサーをしておりましたので、今回は「MIPJunior」で感じたことを中心にお伝えしたいと思います。

2「MIPJunior」に出展されていた番組のほとんどはアニメ作品という印象でした。各国のアニメを見ていて感じたのは、「どこの国のアニメもなんか似たような感じだな~」ということ。3Dにせよ2Dにせよ、どれもアメリカンテイストの作品ばかり。中には、ビジュアルもさることながら設定が「トイストーリー」そのものというような作品までありました。国際展開を考えるとみんな“なんちゃってハリウッド”になってしまうのかな・・・というのが正直な感想です。でもそれってどうなんでしょう?

そんな中、「きかんしゃトーマス」(NHKのホームページ)の新作と、ロシアの「HEROES OF ENVELL」(公式ホームページ)という作品は、数あるアニメの中でも別格でした。

HEROES OF ENVELL:神秘的なゲームが入ったPCを偶然見つけた4人の中学生。 そのゲームが危険な冒険の世界の入り口になっていた。

HEROES OF ENVELL:神秘的なゲームが入ったPCを偶然見つけた4人の中学生。そのゲームが危険な冒険の世界の入り口になっていた。

この2つはプレミア試写会で上映された作品なのですが、何がすごいって、とにかくお金がかかってる! 映画並みのクオリティで、「世界中に売って儲けるぞ!」という“本気度”が他とはまったく違うものでした。もちろんお金をかければいいというわけではないのですが、明らかに他と目指しているところが違うと感じました。

一方、NEPがNHKやマテル、ポリゴン・ピクチュアズと国際共同制作を行ったアニメ「ピングー in ザ・シティ」(番組ホームページ)は試写会でとても評判が良かったです。

©2017 The Pygos Group ©MATTEL,NHK,NEP,PPI

©2017 The Pygos Group ©MATTEL,NHK,NEP,PPI

なんといっても「ピングー」では、登場キャラクターがピングー語しかしゃべらないのが良いのです! 言葉を超えたおもしろさに徹底的にこだわって作っているという点で、他のアニメにない魅力があるのだと思います。

会場で全体を見回してみると、国際展開を考える際には戦略が重要だということを痛切に感じました。NHKやNHKグループが巨額の資金を投じて独自のコンテンツを作ることはできないでしょうから、数多のコンテンツの中で際立つ作品をいかに作るのか? とても難しい問題ですが、しっかり戦略を考えていきたいと思います。

ところで、全体にアニメ作品が多い中で、目を引いたものがあります。オーストラリアの制作会社が会場内で行われた企画コンペのようなものに提案していたもので、「BOXWARS」という企画です。

4子どもたちが中心になってダンボールで戦車や甲冑を作って子ども同士で戦うというシンプルなものなのですが、似たようなアニメの企画が多い中で、手作り感というかアナログ感というか、素朴な魅力がかえって新鮮でした。何より、画面に映る子どもたちが、とても生き生きしていて楽しそうだったのが印象的でした。結局この企画がコンペで優勝しました。

このコンペを見ていて思い出したのが、当社が今年度イベント運営を担った「全日本なわとびかっとび王選手権」です。
10月27日にNHK総合テレビで放送がありましたが、子どもたちのリアルなドラマが生み出す感動は、十分に世界に通用するものだと思います。今年、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会から「東京2020公認教育プログラム」に認定されたこの企画は、今後、さらに規模を拡大していく予定と聞いています。また、イベントの海外展開だけでなく、フォーマット販売も可能なのではと思ったりします。
小学生がクラス全員で参加し、大なわを次々に跳びぬけ、1分間に何人跳べるかを競うというとてもシンプルな「全日本なわとびかっとび王選手権」ですが、そういう分かりやすさがかえって武器になるのかもしれないと強く感じた瞬間でした。

報告:グローバル事業本部 展開・戦略 EP 石川昌孝

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