1988年に始まった「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(高専ロボコン)」は、今年で29回目を迎えます。10月2日の関東甲信越地区大会から始まり、その後毎週末に地区大会が行われ、11月20日には国技館で全国大会が開催されます。毎年必ず見る者を熱くさせてくれる高専ロボコン。そこには、いくつかの理由があります。今回はその魅力を紹介します。
“聖地”国技館を目指して
1988年にNHK放送センターの中にあるスタジオで誕生した高専ロボコン。今では国内であまた開催されている○○ロボコンの草分けです。1991年の第4回大会から、全国すべての高等専門学校が参加し、8つの地区大会によって選ばれたチームが国技館で行う全国大会に出場できる、という今のスタイルになりました。今年地区大会に参加する124チームのうち国技館の舞台に立つことができるのは26チームだけ! 5,000人近い観客、まばゆい照明の中で、自分たちの作った自慢のロボットを披露できることは、高専生にとって夢のような時間です。緊張や興奮、後悔、感謝など、参加している高専生の気持ちが観客にも伝播していく瞬間・・・。この会場全体の一体感は高専ロボコンならではの醍醐味です。
毎年変わる競技課題
ロボコンに参加する高専生にとって、毎年4月の競技課題が発表される日は特別な一日となります。一刻も早く競技課題を知るために、高専生は交代で朝からPCの前でひたすら待ちます。全国の高専でロボコンホームページの更新ボタンが繰り返し押されるため、サーバーがダウン寸前になるほどです。そしてこの日からおよそ7ヶ月間、参加する高専生の生活はロボコン一色になります。どれほどロボコンに熱中するのか、それは現役・卒業生からの「高専ロボコンあるある」を掲載した、2015年のポスターを見ると理解してもらえるのではないでしょうか。「夏休み」とは「別名 幻の休み」、「3分間」とは「競技時間」、などなど、ロボコンにかける思いの強さが読みとれると思います。
そして、毎年競技課題が異なることも、高専ロボコンの大きな特徴の1つです。課題をクリアするためには、毎年、新しいアイデアをひねり出さなくてなりません。2013年は縄跳び、2014年は蒸籠(せいろ)運び、2015年は輪投げに挑戦しました。そして2016年の課題は「箱を運んで台の上に積み上げる」ルールです。
ルールの詳細はこちら。 ルール詳細
一見、簡単に思えますが、箱を運ぶためには「海」と呼ばれる6mの接地禁止エリアを越えなくてはなりません。さらに、75cmの台の上へ積み上げるのもかなりの難題です。
フィールドのパース図はこちら。 フィールドパース図
今年のルールのポイントは大きく2つあります。まずひとつは、重量制限はあるものの、ロボットの台数と大きさに制限はないという点です。そしてもうひとつは、「海」には「船」と呼ばれる台車が用意されていて、この「船」をどう使うかという点です。はたして高専生はどんなアイデアでクリアするのでしょうか? ロボコン事務局のメンバーでさえ、大会前日に行われるテストラン(ロボットの試走)の際、予想をはるかに上回るロボットが登場するため、毎年驚かされています。奇想天外なロボットに出会えること、これも高専ロボコンならではの楽しみです。
狙うは“ロボコン大賞”
「高専ロボコン」の正式名称は「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」です。この「アイデア対決」という言葉は、第1回からずっと引き継がれています。勝敗ももちろん重要ですが、独創的なアイデアで課題を解決しているかどうかが勝負にもまして大切である、という高専ロボコン実行委員会からのメッセージです。優勝よりも名誉のある「ロボコン大賞」が生まれたのもこうした思いからであり、だからこそ、観客をあっと驚かせる“魅せる”ロボットが登場するのです。
たとえば、2013年の「ロボコン大賞」を受賞した富山高専射水キャンパスのロボットがこちら。
縄跳びという課題をクリアするために、出場ロボットの多くがジャンプの繰り返しに耐えられるよう強く重くしてきたのに対し、このロボットはヘリウムガスの入った大きな気球を用いるというアイデアで縄跳びを実現したのです。もちろんこのロボットは大会最軽量で、高専生が片手で運べるほどでした。その軽妙な動きに、観客は笑いをこらえられない様子でしたが、温かい大きな拍手で讃えました。
高専ロボコンをぜひライブで!
高専生と手作りロボットによる熱い戦いは、会場で体感していただくのがもちろん一番ですが、各地区大会での全競技がライブストリーミングでもご覧いただけます。スケジュールなどの詳細はNHK番組ホームページをご覧ください。
NHK番組HP http://www.nhk.or.jp/robocon/
また、各地区大会の模様は総合テレビでも放送します。
NHK総合テレビで 11月13日(日)午前11時から各地域ごとに放送する予定です。
高専生たちの熱い戦い。ぜひご期待ください。
最後に事務局からお知らせがあります。来年2017年に高専ロボコンは第30回の記念大会を迎えます。そこで、今年の全国大会では、2017年に向けたサプライズ企画の発表を予定しています。こちらもぜひお楽しみに!
【高専ロボコン地区大会】
10月2日(日) 関東甲信越地区大会
ひたちなか市総合運動公園 総合体育館(茨城県ひたちなか市)
10月9日(日)東海北陸地区大会
氷見市ふれあいスポーツセンター(富山県氷見市)
10月9日(日)九州沖縄地区大会
牧園アリーナ(鹿児島県霧島市)
10月16日(日)北海道地区大会
釧路工業高等専門学校第一体育館(北海道釧路市)
10月16日(日)近畿地区大会
神戸市立中央体育館(兵庫県神戸市)
10月23日(日)東北地区大会
仙台高等専門学校広瀬キャンパス第一体育館(宮城県仙台市)
10月23日(日)中国地区大会
津山市久米総合文化運動公園体育館(岡山県津山市)
10月30日(日)四国地区大会
新居浜工業高等専門学校第1体育館(愛媛県新居浜市)
【高専ロボコン全国大会】
11月20日(日)全国大会
国技館(東京都・墨田区)
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