伝統と青春が交差する仕事 高専ロボコン2015

11月22日に開催された「高専ロボコン2015」。11か月に及ぶ準備と大会での競技運営に取り組んだ田中プロデューサーは、ロボコンの「哲学」を感じたと言います。脈々と受け継がれてきた伝統に若い学生が青春をかけて挑む「高専ロボコン」の「哲学」を、田中プロデューサーはどう感じ取ったのでしょうか……?


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筆者(前列左から2番目)白熱する試合展開に思わず立ち上がる

「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」通称「高専ロボコン」は今年で28回目の開催となりました。
立ち上げから28年目! なんとわたしと高専ロボコンは同い年、“同級生”なんです。
そのわたしが縁あって高専ロボコンに関わるようになっておよそ2年。今年は初めて、ルール作りから大会本番の競技運営まで、ガッツリ担当させてもらいました。その経験を通じてたくさんの人から教えてもらったのが、「ロボコンの哲学」。その「哲学」があったからこそ、高専ロボコンは28年間続いてきたのだと、実感しています。

国技館で行われる全国大会の開催は、11月。ところが、ルール作りはその10か月も前、1月に始まります。
毎年変わる高専ロボコンのルールは、専門家の先生たちと一緒に案を出し合って作ります。
お客さんやテレビの視聴者が見て面白いと感じていただけることはもちろん大切なのですが、もっと大切なのは、「学生が自由にアイデアを出せる場にする」「仲間と協力して課題解決する経験ができる」ことだとわたしたちは思っています。

そんな思いの詰まった今年の競技は、ロボットによる「輪投げ合戦」。ご覧のような競技場で、ロボットが輪投げの腕前を競います。

ルール検討時のイメージ図

ルール検討時のイメージ図

最大の特徴は、ロボットが投げる輪の大きさをチームが自由に決められることです。「1本1本のポールに確実に輪を投げる」「大きな輪を使って2本、3本のポールをまとめて得点する」など、チームの戦略によって様々なスタイルのロボットが作れます。
輪の材料にビニールホースを使うのも競技のポイント、これがなかなかのくせ者です。大きな輪を使って2本、3本のポールを捉えれば高得点が得られますが、輪が大きくなればなるほど、ホースがグニャグニャして投げづらくなるのです。

どうやって投げるのか?
大会が始まると、様々な答えがあることが分かります。
ある先生は「高専ロボコンは教育イベントだ」と話されます。参加する学生にロボット作りを通じて何かを得てほしい、そんな「哲学」がルールに込められているのです。

高専生たちの手によって実現した輪投げ合戦

高専生たちの手によって実現した輪投げ合戦

高専ロボコンの「哲学」を教えてくれるのは専門家の先生だけではありません。
4月のルール発表から6か月、10月には全国8か所で「地区大会」が行われるのですが、この時わたしの「先生」となってくれたのは、「ロボコンOB」のみなさんでした。

大会の審判にはロボコンを経験したOBが参加してくれることがあります。
母校で地区大会が行われると聞きつけたあるOBは自ら審判を買って出てくれ、就職先の茨城から大会会場の広島まで駆けつけてくれました。

「ドローンのように空を飛ぶ競技なんて面白くない?」と、あるOBに尋ねた時のことです。「既存の製品が答えになる競技は面白くありません。僕たちが夢中になれるのは、どこを探しても正解のない課題に挑戦することです」という返事をもらいました。
なるほど、たしかに「ドローンのように空を飛ぶ」だと、答えはもう決まったようなものです。ですが、「ビニールホースの輪を正確に投げるロボット」を作るのは、「正解のない課題に挑戦する」ことに、ほかなりません。
果たして、全国各地で行われた地区大会では、唯一無二のアイデアを実現させたロボットたちが、それぞれ独自の方法で見事に輪を投げてくれました。
答えのない課題に仲間と挑戦できる場所。それが高専ロボコンの魅力、「哲学」なのだと教えられました。

巨大な輪で3本のポールを狙う大分高専のロボット

巨大な輪で3本のポールを狙う大分高専のロボット

群馬高専のロボット、その名も「上州カウボーイ」

大会に参加する学生からも、気づかされることがありました。
地区大会で敗れてしまった学生に声をかけた時のことです。てっきり気落ちしているかと思いきや、「次の目標ができました、全国大会出場です!」と目を輝かせて話してくれました。
全国大会の決勝で惜しくも敗れてしまったチームの学生は、優勝を逃してもなぜかとても素敵な笑顔をしていました。

なぜ負けてしまったのに表情が明るいのか?

彼らに共通することは「自分たちのロボットのパフォーマンスを存分に出し切れた」という達成感だと感じています。
高専ロボコンにおける「成功」とは事故なく大会が終わるだけでも、面白い番組になるだけでもありません。参加する学生全員が、まだ春のうちから200日以上もかけて仲間と作り上げた成果を、出し切ってくれることなのです。

高専ロボコンの競技時間は僅か3分間。
この3分間を最高のものにするために、多くの人が昔から脈々と続くロボコンの「哲学」を守り、受け継いできました。そのためにロボコンは愛され、これからもロボコンが続いていくのだと感じます。

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大会の模様は12月23日(水・祝)10:05〜11:50 NHK総合テレビで放送されます。

1試合1試合に込められた学生たちの熱い思いを、ぜひご覧ください。
そしてぜひ、来年は大会会場に足を運んでいただき、生の熱気を感じてくださると幸いです。

(グローバル事業本部 イベント・映像展開 プロデューサー 田中翔太)

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「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト」

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