NHKエンタープライズ

150年前と今をつなぐ壮大な物語をプロジェクションマッピングで描く「はるか2018 ~戊辰の風 花の雲~」

2018年05月17日

はるか2018~戊辰の風 花の雲~ 会津若松編

はるか2018~戊辰の風 花の雲~ 白河編

NHKエンタープライズでは2013年から、東日本大震災で被災した福島県を応援するためのプロジェクションマッピングイベント「はるか」の企画・制作を行っています。過去5年間は、毎年春に1都市での開催でしたが、2018年は規模を拡大。1月30日から2月2日にかけて福島県内の4つの小中学校で「学校でプロジェクションマッピング!」を実施し、3月23日、24日には会津若松市の鶴ヶ城で、4月7日には白河市の白河小峰城で、プロジェクションマッピングのイベントを開催しました。「学校でプロジェクションマッピング!」の様子は、以前、このサイトでご紹介させていただきましたので、ここでは会津若松市と白河市で行ったイベントのご報告をいたします。

会津若松編の会場となった会津若松市 鶴ヶ城

白河編の会場となった白河市 白河小峰城

話はいきなり江戸末期にさかのぼります。幕末の激動期、福島では激しい戦いが繰り広げられていました。戊辰戦争です。維新政府軍と旧幕府側の間で繰り広げられたこの戦いにより、福島は甚大な被害を受けました。実は2018年は戊辰150周年の節目となる年です。そして、プロジェクションマッピングの会場である会津若松市の鶴ヶ城と白河市の白河小峰城は、まさに戊辰戦争の激戦地だった場所です。

戊辰150周年の年に、ゆかりの地であるお城でどんな内容のプロジェクションマッピングを行うか
私たちスタッフが考えあぐねていたとき、福島県のある方からこんな話を聞きました。「福島では戊辰戦争を振り返るとき、どうしても後ろ向きになってしまいます。戦いに負けたからです。でも私はもう少し前向きにとらえたいなと思うんです。そのカギが“武士道”じゃないかと思っているんですよね」。戊辰戦争の際に旧幕府側だった会津藩など東北・福島の軍勢は、維新政府軍に敗れました。戦いに敗れた歴史はつらい過去であり、なかなか未来志向になれない。しかし、勝った負けたにこだわるのではなく、その時代を生きた人々の生き様に目を向けていけば、もう少し違ったものの見方ができるのではないか、というのがその方の思いでした。

そんな話をうかがったことがきっかけとなり、私たちは、プロジェクションマッピングで「150年前に苦難の時代を生きた侍たちの精神を描く」というアイデアを得ました。また調べてみると、戊辰戦争を戦った人たちの中には、明治という新しい時代になってから様々な分野で活躍した人も多くいました。そうした著名な人々だけでなく、戦場となり荒廃したふるさとを再興しようと努力した人はたくさんいたはずです。そして今、福島の人々は、東日本大震災からの復興に向けて歩み続けています。

福島には、“苦難に立ち向かう勇気”や“不屈の精神”が息づいている
私たちは、プロジェクションマッピングのテーマを「戊辰の風 花の雲」とし、戊辰戦争を戦った侍たちの精神が150年後の今に続く壮大な物語を、映像と音楽で表現することに挑戦しようと決めたのです。

<第1部>の様子 白河小峰城

作品は3部構成。第1部では戊辰戦争を戦った侍たちの精神、“武士道”を描きます。クリエイティブディレクターのNEP土手内賢一や映像クリエイターの橋本大佑さんがアイデアを出し、墨絵調のCGで侍を描くこととし、その侍が剣舞のように舞いながら襲い来る悪霊を退治していくという映像を作ることにしました。そこに音楽監督の石田多朗さんが作曲したピアノと三味線による凛とした音楽が重なります。

<第2部>の様子 鶴ヶ城

第2部に登場するのは、四神(ししん)です。かつて会津藩には、白虎隊、青龍隊、朱雀隊、玄武隊という4つの隊がありました。侍たちの魂がそれぞれの神の姿となり、大地にエネルギーを降り注いでいくというストーリーです。

このシーンに石田さんは、太鼓やパーカッションをベースにした音楽を作り、さらに、雨・水・土・雷といった自然をモチーフにした歌詞のコーラスを加えました。縦横無尽に駆け巡る四神の姿と独特の雰囲気を醸し出す音楽によって、エネルギーに満ち溢れた迫力あるシーンが完成しました。

<第3部>の様子 鶴ヶ城

そして第3部。エネルギーに満たされた福島の大地に、春が訪れます。このとき登場するのは、福島県出身の引地洋輔さんがリーダーを務めるアカペラボーカルバンドRAG FAIRです。引地さんは毎年六本木ヒルズアリーナで行われている「福島フェス」の実行委員を務めるなど、震災後、ふるさとを応援をしようと様々な活動をしています。引地さんたちRAG FAIRのメンバーが歌うのは復興支援ソング「花は咲く」。美しい歌声にあわせて桜の花が咲き誇り、やがてふるさと福島が“花の雲”に包まれていきます。

RAG FAIR 左から順に、荒井健⼀(Vocal)、加藤慶之(Vocal)、
引地洋輔(Vocal)、土屋礼央(Vocal)、奥村政佳(Voice Percussion)

復興支援ソング「花は咲く」にあわせて桜の花が咲き誇り、“花の雲”に包まれる

鶴ヶ城の天守閣から美しい歌声が響きます

作品は全部で15分と、プロジェクションマッピングとしては超大作となりました。映像制作をした橋本さんは、福島県の出身で毎年「はるか」の映像を作ってくれていますが、「今回はまさに命がけで映像を作った」と語っていました。
また、RAG FAIRの引地さんは、「大人になるまでの私を育ててくれたのは、福島という土地であり、そこで出会った人々です。恩返しの気持ちで、親孝行のような気持ちで「花は咲く」を歌いたいと思います」と語っていました。

福島の歴史をモチーフとした、アーティストたちの思いのつまったこのプロジェクションマッピングを、およそ1万5000人の方に見ていただくことができました。子供からお年寄りまで、皆さんから「きれいだった」「迫力があった」「感動しました」との感想をいただきました。中には海外の方もいて「アメージング!」とのお言葉も。

今回プロジェクションマッピングを行った会津若松市の鶴ヶ城は、150年前の戦争によってボロボロに傷つきました。そのときの天守閣の写真が今も城内に飾られています。苦しい戦争を戦い、その後の復興に尽力した古の人々に敬意を表します。一方、白河市の白河小峰城の城内には、東日本大震災によって崩れてしまったときの石垣の写真が飾られています。今回は7年かけて修復を行ったその石垣にプロジェクションマッピングを行いました。今もなお震災からの復興に向けて歩み続ける人々に、心よりエールをお送りいたします。

(グローバル事業本部 展開・戦略 エグゼクティブプロデューサー石川昌孝)

 

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