「NHK学生ロボコン2019~ABUアジア・太平洋ロボコン代表選考会~」~2019年度のロボコン~

1988年に「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト(通称:高専ロボコン)」の第一回大会が開催されてから、今年は32年目になります。1991年には現在の学生ロボコンのもとになる「NHK大学ロボコン」が始まり、2002年にその国際大会である「ABUロボコン」が始まりました。今や世界中にNHKのロボコンが広がっています。特にベトナム、中国、インド、タイなどでは、日本を超える数の学生たちがロボコンの舞台を目指してロボットを製作しています。
NHKエンタープライズは、これらのロボコンのイベント制作を行っています。このコラムでは、5月に行った「学生ロボコン2019」から、今年度中に開催するロボコンを順番にご紹介します。またコラムの最後に、NHKエンタープライズが新たに始める「小学生ロボコン」もご紹介します。

<NHK学生ロボコン2019 開催>

5月26日(日)に「NHK学生ロボコン2019」を蒲田の片柳アリーナ(日本工学院専門学校)で開催しました。

NHK学生ロボコン2019会場(片柳アリーナ)の様子

NHK学生ロボコン2019会場(片柳アリーナ)の様子

日本全国からたくさんのエントリーがありましたが、2回のビデオ審査を経て選ばれた22チームが本大会に参加しました。この大会の優勝チームは国際大会である「ABUロボコン2019ウランバートル」に日本代表として出場します。
NHKロボコンの特徴として“毎年変わる競技課題”があります。今年の競技課題は2018年8月に発表しました。参加チームはそれから9か月の間、この日のために準備をしてきました。

<ロボコン史上初!4脚自動ロボット>

長いロボコンの歴史の中でも初の試みだったのが「4脚移動ロボット」でした。しかも人がコントロールするのではなく、すべて自動で動かなくてはいけません。
これまでの競技課題では、タイヤで移動するロボットがほとんどでした。そして“いかに早く” “正確に”移動できるか、ということが勝負を左右する大きな要素でした。その結果、多くの常連チームの中にはタイヤ移動の長年のノウハウが蓄積しています。チームによっては、もうこれ以上速くはできないというところまできていました。
そんな状況で学生たちの良い刺激になって欲しいという思いで、私たちは今回の競技課題に「4脚移動ロボット」を採用しました。
その結果、たくさんの個性的な4脚移動ロボットが会場を湧かせました。大きな発見は、“「4脚移動ロボット」が「自動」で動くとまるで生き物のように見える”ということでした。馬のようなロボット、蜘蛛のようなロボット、そしてこの世に存在しない“何か”のようなロボット・・・。

東京大学の4脚ロボット。まるで馬のようにフィールドを駆け抜けました。

東京大学の4脚ロボット。まるで馬のようにフィールドを駆け抜けました。

熊本大学の4脚ロボットは蜘蛛型。地を這うようにゴールを目指します。

熊本大学の4脚ロボットは蜘蛛型。地を這うようにゴールを目指します。

そのロボットたちが動く様子は、出場チームが制作したチーム紹介ビデオでご覧いただくことができます。その中から一つ、東京工科大学のチーム紹介ビデオを紹介します。結果は予選落ちでしたが、とてもよくできた4脚ロボットでした。

 

<15年ぶりの出場、そして初優勝>

この競技課題で見事日本の頂点に立ったのは、なんと15年ぶりに学生ロボコンに出場した京都大学でした。
京都大学は多くの優勝候補チームが試合中に不具合を起こして倒れていく中、確実に課題をクリアしていきました。正直なところ、京都大学の優勝は誰も予想していませんでした。なにより、チームメンバー本人たちが一番驚いている様子でした。優勝の瞬間も、彼らの表情は「喜び」というよりも「驚き」でした。
ここで、京都大学が強豪長岡技術科学大学を破った一戦をご覧ください。

 

いったいなぜ、長年蓄積したノウハウも持たない彼らが優勝できたのでしょうか。その要因の一つは、競技課題にあると思います。
今年の競技課題は例年に比べて難しい課題でした。なぜなら、どのチームも4脚移動の機構を作るのは初めてだったからです。全てのチームがゼロから機構を制作しました。例えばタイヤで移動するロボットであれば、常連チームは蓄積されたノウハウや磨き上げられた技術をベースに開発を始めることができます。しかしそういったノウハウを応用できない今回の競技は、ある意味ですべてのチームが同じ地点からスタートしたと言えます。それが逆に、15年ぶりにロボコンに挑戦した京都大学に有利に働いたと言えるでしょう。

優勝した京都大学の4脚ロボット。無駄のないスマートな機構。

優勝した京都大学の4脚ロボット。無駄のないスマートな機構。

もちろん、彼らの優勝の裏には涙を呑んだチームもたくさんあります。参加した学生たちは様々な想いをもって、9か月間この競技課題に取り組んできました。その学生たちにとって、この経験が彼らの人生に少しでもプラスになることを願っています。

彼らの熱い戦いぶりは7月15日(月・祝)にNHK総合で放送される予定ですので、ぜひご覧ください。

<ABUロボコン2019ウランバートル>

一方、優勝した京都大学のロボコンはまだまだ終わりません。彼らは今、8月25日(日)にモンゴルで行われる「ABUロボコン」に向けてロボットの調整を行っています。
彼らはABUロボコンで、各国の国内大会で勝ち上がってきた強豪チームと戦うことになります。特に中国やベトナムの代表チームは非常に優れた4脚ロボットを作っているようです。また、開催国であるモンゴルのチームも例年になく頑張っています。果たして、日本代表の京都大学はどんな活躍を見せてくれるのでしょうか。
こちらは強豪中国の国内大会決勝動画です。

 

どんな面白い四脚ロボットが登場するのかも、今年のABUロボコンのみどころです。世界の学生たちが、どのようなアイデアを披露してくれるのか。今から楽しみです。ぜひ皆さんもご注目ください。

<高専ロボコン>

ABUロボコンが終わっても、ロボコンは終わりません。10月には高専ロボコンの地区大会が全8地区で行われます。全国大会は11月24日に国技館で行われます。
今年の高専ロボコンの競技課題は「らん♪RUN Laundry」という“選択物干し”です。良いロボットが登場したら、ぜひ洗濯物干しロボットの商品化を目指してほしいところです。
詳細はこちらの公式HPでご覧ください。
http://www.official-robocon.com/kosen/

<第一回 小学生ロボコン>

最後に「小学生ロボコン」をご紹介します。
今や世界中の学生が参加するNHKのロボコンですが、NHKエンタープライズは若い世代にさらに裾野を広げていきたいと考えています。
そこで、2020年の3月に「第一回 小学生ロボコン」を開催することになりました。
日本では、2020年に小学校でプログラミングが必修化されます。今後、AIをはじめ様々な最先端技術が生活の一部となっていきます。そんな新しい時代を迎えるにあたって、私たちはNHKロボコンに貫かれている「アイデア対決」というコンセプトを小学生に知ってもらいたいと思っています。ものが溢れる今だからこそ、ロボコンを体験してもらい、楽しんでもらい、モノづくりの楽しさや喜びに触れる機会を増やしたい、というのがロボコン事務局の想いです。
小学生ロボコンの意義にご賛同いただける協賛企業も募集しております。ご興味がある方はぜひNHKエンタープライズロボコン事務局までこちらのフォームからご連絡ください。
小学生ロボコンの関連イベントとして、今年の夏には「ロボコン体験ミュージアム シーズン3」を開催します。詳細は下記の公式HPをご覧ください。

(グローバル事業本部 イベント・映像展開 チーフ・プロデューサー 吉田拓史)