現在、医学の分野では様々な計測機器が開発され、体内情報のビッグデータが蓄積されつつありますが、そのデータの利用は研究・治療のごく一部に限られています。しかし、これらのビッグデータを可視化し、広く一般に公開することによって、人体の神秘や生命の偉大さを多くの皆さんに知っていただく機会となることが期待されます。
今回当社が「創立30周年記念事業」として企画した「body: the inside story」は、こうした体内ビッグデータを当社の持つ4K技術で可視化し、広く一般に提供し、有効活用していただこうというプロジェクトです。
体内情報ビッグデータの活用
MRI(核磁気共鳴画像法)やCTスキャン(コンピューター断層撮影)、様々なバイオイメージングなど、体内情報のデータは、病気の治療のために必要な部分だけが可視化され、多くは活用されずにいます。また、これらの画像は医療用機器でのみ扱える特殊な形式であるため、一般での利用は困難です。
しかしこれらのデータは、人体を細胞のレベルで記録した貴重なデータです。こうしたデータを可視化することで、人体の神秘を「映像」として再現し、広く一般に人体の神秘を知っていただくことにつながります。
このプロジェクトでは、ジョンズホプキンス大学(アメリカ)森進教授の研究室、また理化学研究所の画像情報処理研究チームなどから臓器や脳など生体の構造や機能のビッグデータの提供を受け、4K品質で3次元の人体映像アーカイブスの構築に取り組みます。
また、可視化されたデータは無償で提供元に還元し、基礎研究や科学教育のために活用されます。
人体4Kアーカイブスラインナップ(予定)
生殖器・胎盤(2014年9月完成)
- 全身の細胞に働きかける魔法の物質“ホルモンの誕生”の舞台を脳で体感。
- 選ばれた細胞が卵巣を突き破って、体内に旅立つ“排卵の瞬間”を目撃。
60兆の細胞に育つ胎児。樹木のような胎盤の美しさ。命を育む感動の営み。
消化器(2015年4月完成予定)
- シネMRIデータから映像化した胃の激しい活動。驚きの消化プロセス。
- バルーン内視鏡から人体の楽園“小腸”の絶妙じゅうたんの仕組み探求。
- 100兆以上が共生する腸内細菌。生態系フローラが広がる粘液ワールド。
脳(2015年4月完成予定)
- 重く柔らかい1,400グラムの脳。3重の膜と液体で聖域を包む精緻な防衛構造。
- 神経細胞の軸索ネットワークを最新DTIデータから映像化。記憶の秘密。
※2017年までに、「血管・循環器」「骨」「腎臓」「神経・感覚器」「皮膚」の4K映像アーカイブスを制作予定
提供実績
このプロジェクトで可視化した臓器データをもとに映像化したCGは、以下の番組で活用されました。
4K番組「生命誕生/THE BODY~Our Planet Within」(15分)
- ライセンス先:NTTぷらら「ひかりTV 4K」(VODサービス)
「腸内細菌」ハイビジョン版(約4分)
- ライセンス先:NHK「NHKスペシャル 腸内フローラ~解明! 驚異の細菌パワー」(2015年2月22日 NHK総合テレビ)
体内情報ビッグデータを可視化するNEPの技術
- バイオ・インフォグラフィックスによるデータの可視化当社が持つD.T.E.(データ・トランスファー・エンジン)は、スーパーコンピューター「京」による気象予測シミュレーションの映像化など、NHKの番組で数々の実績があります。D.T.E.で可視化したデータに加え、電子顕微鏡で撮影したテクスチャーや研究者の知見を踏まえ、生命の営みをより現実に近く映像化する技術が、このプロジェクトで開発された「バイオ・インフォグラフィックス」です。
- 4K映像編集システム「nep infini(ネップアンフィニ)」による4Kデータ管理4K番組制作で用いられ、RAW形式のデータのカラー管理、編集データの管理等を行うシステム「nep infini」によって、4K制作のコストと時間を減らし、科学分野での4Kコンテンツ制作のすそ野を広げます。