VRで体験する「世界一過酷なレース」

パタゴニアの絶景南米パタゴニアの大自然を駆け抜ける「ウルトラ・フィヨルド」は、世界一過酷なレースといわれます。レースを取材した10月2日放送のNHKスペシャル「神の領域を走る」のWebサイトは、360度見渡せるVRの技術を使い、ランナー目線でレースを体感できる仕掛けとなっています。VR=バーチャルリアリティーの可能性を、神部プロデューサーがご紹介します。


南米パタゴニアの大自然を舞台に、不眠不休で141キロを駆け抜けるレースがあります。
去年第1回大会が開かれ、参加した33人中、ゴールにたどり着いたのはわずか10人。完走率は30パーセントでした。
実はこうした長距離レースは世界各地で年間何百と開催されています。その中で過酷とされるものでも完走率は60パーセント前後です。それがたった30パーセントしか完走できないとは!
どれほど厳しいレースなのか? どんな人が参加するのか? 見てみたい!
……というわけで、今回の取材は始まりました。

レースは厳しい大自然を相手に行われる

レースは厳しい大自然を相手に行われる

今年の4月に行われた第2回大会。その取材を始めてまず驚きました。なんと参加者が増えていたんです! 去年の3倍近い91人が世界の18か国からエントリーしました。そう「世界一過酷なレース」の噂を聞いて、いっちょ挑戦してやろうと強者たちが集った結果、一気に人気レースになったというわけです。このレースで上位に入って名を上げようという血気盛んな若手ランナーも少なくありません。
そんなレースに日本人も6人参加したのですが、その中に、長距離山岳レース(トレイルランニング)ファンなら知らない人がいない日本の第一人者、鏑木毅(かぶらきつよし)さんの名前がありました。
鏑木さんは、トレイルランニングの世界最高峰「ウルトラトレイル・デュ・モンブラン」で3位に入るなど、世界にその名を知られたプロランナーです。実績も知名度もある鏑木さんが、自然環境に大きく左右されるリスキーなレースに参加したのには、ある理由がありました。

……というお話は10月2日放送のNHKスペシャルでご覧いただくとして、今日ご紹介するのは番組特設のホームページです。
すみません、ここから本題です。

みなさんはVRという言葉を聞いたことはありますか?
バーチャルリアリティー=仮想現実です。具体的には、360度をぐるっと見渡せる映像やゲームなどのソフトウエアと、それを見るための仕組みを指します。VRの映像を見ると、あたかもそこに自分がいるような臨場感を味わえます。そのため「没入型メディア」と呼ばれたりもします。
実は今年は「VR元年」なんて言われています。ヘッドセット型のビューワーが市販され、大手メーカーが10月に発売するVR対応のゲーム機はあっという間に予約で完売しました。インターネットでも、GoogleやFacebookがVRに対応したサービスを次々投入しています。

さて、世界一過酷なレースの話でした。
世界一過酷なレースに自分が出ることはできなくても、そこを走っているアスリートの気分になれるのなら、少し体験してみたい気はしませんか?
それを実現しようというのが、ここで紹介する番組特設ホームページなのです。
これを読んでいる皆さんはインターネットにつながっているでしょうから、論より証拠、まずはホームページを見てください。
どのように撮影したかのメイキング映像もありますので、もうこれ以上私が言うべきことは何もありません。(^_^)/

番組ホームページ http://www.nhk.or.jp/special/run/
番組ホームページ

……続きを読んでくださってありがとうございます。<(_ _)>

VRはいかがでしたか?
放送の当日には、スタートからゴールまで合計9本のVR動画が公開されているはずです。
全て走り抜けましたか? 暗い部屋でスマホを使ってイヤホンで音を聞くとより臨場感を得られると思います。
すでに放送を見終わっていたとしたら、鏑木さんたちが走っていたあの場所にいるアスリートの気持ちが少し、実感できたでしょうか?

今回撮影に使ったカメラJackIn Headは、ソニーコンピュータサイエンス研究所の暦本純一副所長がコンセプトを作り、笠原俊一研究員が様々な実験を行っています。実は映像をLIVEで送って、遠く離れた人が視覚を交換したら面白いんじゃないか、というのが研究の主なテーマなんです。面白そうな研究ですよね。気になったらこちらのホームページも見てみてください。
https://www.sonycsl.co.jp/project/2373/

撮影したVR画像 360度すべての方向がこの1枚に収められている

撮影したVR画像 360度すべての方向がこの1枚に収められている

 

自分とは全く違う人の気分が味わえるのがVRの特徴の一つです。
今回は極限のレースに参加したアスリートの気分を味わってもらいましたが、まだまだいろんな可能性がありそうですよね。
例えば、ステージに立つアイドル? スポーツ選手? 新幹線の運転手? あなたなら何にJackInしてみたいですか?

(制作本部 番組開発 エグゼクティブ・プロデューサー 神部恭久)


NHKスペシャル「神の領域を走る パタゴニア極限レース141km」
http://www.nhk.or.jp/special/run/
10月2日午後9:00からNHK総合テレビで放送