味わわないと損です! ロボットの祭典・ABUロボコン

01-page2002年に幕を開けたロボコンの世界大会「ABUロボコン」は、今年はインドネシアで開催されました。インドネシアのスタッフと1年半の間準備に携わった日景千秋プロデューサー。様々にお国柄が表れる国際大会ならではの面白さを実感したようです……。


オリンピック。
それは世界中のアスリートが集まり、日ごろのトレーニングの成果を披露し、観客はその姿に感嘆するスポーツの祭典。

「ABUロボコン」とは? と聞かれたら……。
オリピックになぞらえてこう言えると思います。
世界中の若いエンジニアが集まり、日々の開発成果を披露し、参加者も観客もそしてテレビを見た視聴者の方々も、未来の技術者たちのモノ作りに対する情熱に感嘆するであろう、ロボットの祭典である、と。

もう少し丁寧に説明すると……、
正式名称は「ABUアジア・太平洋ロボットコンテスト」。
2002年より毎年開催されている、名前の通りアジア・太平洋の国・地域の大学/大学校/高専に所属するエンジニアの卵たちがロボットを開発し、競わせるロボットのコンテストです。

02-egypt-russia-chinaもともとは1988年にNHKが立ち上げた「高専ロボコン」から世界大会へと発展していったものですが、今や各国ではすごい盛り上がりを見せています。
ベトナムでは優勝チームに奨学金を出すなど国をあげて応援していますし、タイでは優勝チームが街中を凱旋パレードしました。
2015年の開催地、インドネシアでもロボコンは大人気。
会場周辺一体にのぼりが立ち、会場内でもきらびやかな照明やショータイムなど、大スターのコンサート並みに豪華です。

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国・言語・文化も異なるアジア・太平洋地域の20近くの学生チームが一堂に集まり、一つのお題(課題)に対して様々なアプローチでクリアするためのロボットを作り、見る者を楽しませます。そんなイベント、なかなか無いと思いますし、けっこうスゴいことだと思います。

05-teams今年の競技課題はインドネシアで最も盛んなスポーツ バドミントン。
これをロボットにさせてしまう、“挑戦的”なものです。
(ルールがどれだけ“挑戦的”な“ものなのかは前回の記事をご参照ください)
各国から選ばれた代表チームもかつてない難題にそれぞれのアイデアや技術を集結させて挑みます。
その表情は真剣そのもの。そして、本当にシャトルを打ち合ってしまう学生さんには頭が下がります。

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大会の主役はもちろん学生さんとロボットですが、ここで裏方のスタッフさんにもスポットをあてたいと思います。大会は2015年の8月のたった1日ですが、開催までには長い道のりがあります。
ホスト(主催)は毎年各国が持ち回りで担当しますが、2015年のインドネシアが競技・運営委員会を立ち上げたのは、さかのぼること1年半前の2013年12月。
インドネシアの国の教授陣や放送局のスタッフが集結して知恵を絞り、ルールを決めて2014年の8月にルールを発表します。そこからさらに1年間、学生さんやロボットが大会で存分にパフォーマンスを見せられるよう準備を進めます。

以前、「NHK学生ロボコン2015」の記事の冒頭にこんなことを書きましたが、


ロボコンの競技ルールを作ることについて、ある先生はこう言いました。
「斬新で教育効果が高く、テレビ番組としても面白く、会場が盛り上がり、致命的な穴は皆無で学生が喜ぶルールを作るべし。ただし製作テスト無し、いきなり本番。あ、失敗したら容赦なく総スカン食うことになります。そんなお題を毎年課せられるのがロボコン事務局です」と。


ABUロボコン版はこうなります。


(各国の学生にとって)斬新で教育効果が高く、(各国で放送するにあたって)
テレビ番組としても面白く、(各国から観客が集まっている)会場も盛り上がり、
致命的な穴は皆無で(各国の全参加チームの)学生が喜ぶルールを作るべし。
ただし製作テスト無し、いきなり本番。
あ、失敗したら容赦なく総スカン食うことになります(各国から)


……けっこうシビアだと思いませんか??
やること・検討することは山ほどあります。
学生さんはルールを理解しているか(英語を母国語としない人々が、ロボットの専門用語も使って意思の疎通を図ることは容易ではありません) / ロボットやバッテリーはきちんと通関できそうか(旅行の荷物と違ってけっこう厳しいのです) / 宿泊場所は大丈夫か(大会中は300人以上が集まります) / 会場までの移動手段は? 所要時間は? / 大会進行スケジュールは? /お祈りをする部屋やベジタリアンの食事はあるか……?

NHKエンタープライズのABUロボコン事務局は何をしているかというと、こういったシビアな試練をホスト国が乗り切るべく、ホスト国のスタッフとともに立ち上げから伴走し、大会終了まで完走するのが役割です。

とは言うものの、心配症な日本と大らかなアジアでは、打ち合わせでは意思の疎通が取れているようでも、蓋を開けると「大丈夫」や「誤差」の定義がだいぶ違ったりします。
1、2ミリの隙間でもそこそこ大騒ぎになる日本、明らかに「溝」レベルでも「隙間」と呼ぶ海外勢、2、3分でも「遅刻」の対象になる日本、2、30分遅れても「誤差」と捉える海外勢……。
世界は広いなと感じます。「画像認識や飛距離を検証すべく、本番と全く同じシャトルを入手したい。型番のみならず、製造番号まで教えよ」という国がある一方で、「安いんだよね、こっちの方が」と黒塗り(!)のシャトルを使おうとした国もあります。

これだけ違う人々が集まってどうやって大会が成り立つのだろう、とつくづく疑問なのですが、ばたばたしている間に いつの間にかどうにかなってしまっていて、最後までその謎が解けぬまま、大会は成功してしまったりします。アジアの不思議・底力。

参加する学生もたくましく、頼もしい限りでした。
周りがどう騒がしくとも、多少のトラブルがあろうとも、一心不乱にロボットの調整を進める中国。
ベトナムは前日まで重量オーバーで出場も危ぶまれたのに、一晩で改良し優勝しました。
ネパールは大地震で校舎もがれきの山となっている中、ロボットを仕上げて出場にこぎつけました。
ときには休息も必要。エジプトは本番中もお昼寝をしていました。

完全自動ロボットで会場を沸かせた強豪・中国

完全自動ロボットで会場を沸かせた強豪・中国

何本ラケットがついているの? 連覇を成し遂げたベトナム

何本ラケットがついているの? 連覇を成し遂げたベトナム

いつもにこやか。強豪・中国相手に健闘したネパール

いつもにこやか。強豪・中国相手に健闘したネパール

そしてどの国にも共通して言えるのは、勝敗に縛られすぎず、大会そのものを楽しんでいたことかな、と思います。
ABUロボコンは試合もさることながら、彼らのロボコンやロボットにかける“情熱”や何事も楽しもうとする心に接することが出来るのが一番の魅力かもしれません。

(左)大会終了後はみんな友達。ボルブドゥールの遠足で (右)夕食後の自由時間にビリヤードの腕前を競う面々

(左)大会終了後はみんな友達。ボルブドゥールの遠足で (右)夕食後の自由時間にビリヤードの腕前を競う面々

19チーム全員集合!

19チーム全員集合!

文字と写真だけでは伝えきれない大会の模様をお伝えすべく、NHKの番組制作チームが身を捧げて作った番組が、9月22日(火)午前10:05~10:59に放送されます(NHK総合テレビ)。
みなさん、是非ご覧ください。そして、終わってほっとしたのもつかの間、既に2016年のルールが発表され、学生さんたちは来年に向けてもう作戦を練っています。
番組を見た方、ロボット好きな方、ロボコンの魅力にまだ出合っていない方、来年は「ABUロボコン」の国内予選である「NHK学生ロボコン」(東京で開催されます)へどうぞお越しください。

ロボコン公式サイト:http://www.official-robocon.com/

12-profile

日景千秋(筆者、左から2番目) グローバル事業本部 イベント・映像展開 プロデューサー。2014年の高専ロボコン、2015年のNHK学生ロボコン、ABUロボコンを担当。