古代からの信仰の島 沖ノ島をスーパーハイビジョンで体感してみませんか?

世界文化遺産の日本推薦候補となった玄界灘に浮かぶ沖ノ島。古代からの信仰の島をスーパーハイビジョンで撮影した作品が、九州国立博物館で上映開始されました。通常は人が立ち入ることができないこの島の空気をいかに伝えようと試みたか、担当の寺田プロデューサーがご紹介します。


みなさん、4Kってご存じですか? 家電量販店のテレビ売り場の売れ筋はこの4Kテレビなんだそうです。CS放送の一部やビデオ・オン・デマンド(VOD)で、4Kの番組を見ることができます。ハイビジョンテレビがおよそ200万画素なので、800万画素ある4Kテレビは、同じ大きさのハイビジョンテレビの“4倍きれい”だということになります。

本日のお題は、この4Kテレビのさらに4倍きれいな「8Kスーパーハイビジョン」です。ハイビジョンテレビとの比較だと、なんと16倍もきれい! ということになります。
8Kスーパーハイビジョンは、来年2016年からBSで試験放送がはじまり、2018年に実用放送がBSとCSではじまる予定です。

……という書き出しだと、8Kはこれからのメディアと思われるかもしれませんが、実は10年も前からたくさんの方に見ていただいている場所があります。九州国立博物館にある「スーパーハイビジョンシアター」です。

九州国立博物館
九州国立博物館は福岡県太宰府市に2005年開館。世界初! の常設8Kスーパーハイビジョンシアターも今年で10年目を迎え、延べ40万人が8K映像を体験しています。これまでに6本の博物館オリジナル8Kコンテンツが作られ、その制作を私たちが担当させていただきました。

九州国立博物館「スーパーハイビジョンシアター」

九州国立博物館「スーパーハイビジョンシアター」

九州国立博物館「スーパーハイビジョンシアター」

7本目となる今年の新作のタイトルは、「神やどる島 宗像 沖ノ島」。ご存じの方も多いと思いますが、2015年、日本からのユネスコ世界文化遺産推薦候補になっているところです。
沖ノ島は、九州と朝鮮半島の間、玄界灘の中央に位置する絶海の孤島です。古くからこの海域を行き来する人々の安全を祈願する神の島として、信仰の対象となってきました。島内には古代の祭祀(さいし)跡がほぼ手つかずの状態で残されており、古代の貴重な歴史資産になっています。また、大陸との交流を物語る多数の奉献品が発見されており、約8万点にもおよぶ出土品の全てが国宝に指定されているんです。

九州本土からおよそ60キロの“絶海の孤島”沖ノ島

九州本土からおよそ60キロの“絶海の孤島”沖ノ島

古代からの信仰は今では宗像大社に引き継がれ、島にただ一人駐在する宗像大社の神職が、毎日お祈りをしています。ご神体である沖ノ島は神聖な場所のため、通常、一般の人は上陸できません。そこで、8Kスーパーハイビジョンの登場です。8Kは見る人の視野全体を覆っても、画素が見えないくらいきれい(解像度が高い)なのが特徴で、まるで3D映像のような立体感を感じるほどの、高い臨場感をもっています。この8Kを通じて、通常は訪れることができない沖ノ島を博物館来場者に体感してもらおうというのが、今回の制作のねらいです。

制作の第1段階は、我々制作スタッフが沖ノ島を体感することからはじまりました。すなわちロケハンの実施です。2015年1月、チャーターした漁船は2メートルを超える冬の荒波にもまれ、2時間かけてようやく到着。島には厳格な規則があります。「上陸者は古例により海水にて禊(みそぎ)をし心身を清める事」。船酔いでふらふらしている体が真冬(1月です!)の海水で目覚めます。

「沖ノ島上陸心得」

「沖ノ島上陸心得」

禊の後は山登りです。周囲に何もない開放的な海岸から、薄暗い原生林を通りぬけると目的地に到着、突如目の前に高さ10メートルはありそうな巨岩が出現。この巨岩こそが古代祭祀の舞台です。そして大きな石にはさまれるようにしてたたずむお宮で神職が日々お祈りをしています。

沖津宮

沖津宮

足元をよく見ると、土器のようなものの破片が地面のあちこちに散らばっています。周囲には1,000年以上前に行われた祭祀の後が残る巨岩群。さらには連綿と世代交代を繰り返してきた原生林が囲みます。その島にいること、そこに流れる時間を感じとることこそが沖ノ島を体験することだと悟りました。それはまた、8K映像を通じて沖ノ島を実感してもらおうという目標が、いかに高いハードルなのかを思い知った瞬間でした。

ロケハンの後、まだ九州国立博物館に行ったことのないスタッフと博物館に寄り、8Kシアターも体験。8K初挑戦のカメラマンにスクリーンがすぐ目の前にある視聴環境を体験してもらい、カメラワークの参考にしてもらいます。

実際に撮影を行ったのは梅雨明け後の7月の終わりから8月の上旬でした。毎日10人前後のスタッフとともに船で島との間を往復。島では毎日心身を清め、その甲斐あってか天候に恵まれたロケとなりました。最終日には空撮も実施し、無事撮影終了。
10月6日より、九州国立博物館8Kスーパーハイビジョンシアターで、一般公開がはじまりました。

果たして、沖ノ島を体感できる8Kコンテンツとなったのか?
是非シアターに足をお運びいただき、その答えを皆様にご確認いただければ幸いです。

(グローバル事業本部 デジタル・映像イノベーション エグゼクティブ・プロデューサー 寺田一教)

※「神やどる島 宗像 沖ノ島」は2016年3月まで上映の予定(2015年10月6日現在)

九州国立博物館ホームページ
九州国立博物館 スーパーハイビジョンシアター
宗像大社ホームページ